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高松高等裁判所 昭和35年(く)9号 決定 1960年7月26日

少年 B(昭一八・七・二二生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は記録に綴つてある少年の抗告申立書に記載のとおりであるからここにこれを引用する。

論旨は原審が認定した五個の事実の内第五の傷害については自分は相手の人を一回も殴打していないのである、又自分は今迄一度も少年院に送致されたことはなく今回が初めてであるのに、最初から特別少年院に送致する旨決定されたのは不当な処分であると思うというのである。

しかし記録を調査するに、C、D、E、F、G、H及び少年の司法警察員に対する各供述調書の記載を綜合すると、少年は昭和三五年五月二四日午後一〇時三〇分頃友人であるFやG及びH、E並びにD等と共にバーマドロスに赴き飲酒中、船員Cが入つて来るや、少年が右Cに因縁をつけてビールをおごらせようとして、同人に対しビールをおごれと要求し、同人が金がないといつてこれを拒絶するや、少年が一寸出て来いといつて同人を同店前に連れ出した上、右F、G及びH、E等と意思を相通じ五名がこもごも手拳で右Cの顔面等を殴打し、同人が路上に屈みこんだ後も少年やGやH等が同人を足蹴りして暴行を加え、よつて同人に対し治療約一週間を要する顔面打撲傷等の傷害を与えたものであることが明らかで、少年のこの点に関する弁解は措信できない。原決定には何等事実の誤認はない。そして少年は未だ少年院に送致されたことのないことはその主張のとおりであるが、少年は既に虞犯事件により昭和三十四年十二月八日松山保護観察所の保護観察に付されていたが、担当保護司や実母の監督にも服さず不良仲間との交友を続け本件五件に及ぶ非行を重ねたものであり、その非行性が相当高度で初等又は中等少年院ではその処遇が困難な事態が予想され特別少年院に収容するを相当とすることは原決定がその処遇の部に詳細説示したとおりである。従つて原決定には毫も処分の不当はない。

よつて本件抗告は理由がないから少年法第三十三条第一項により主文のとおり決定する。

(裁判長判事 三野盛一 判事 渡辺進 判事 小川豪)

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